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2015/10/24 UP

Andrew Richardson『Richardson』ISSUE A8 Editor in Chief Interview

アンドリュー・リチャードソン
『リチャードソン』マガジン編集長 インタビュー

interview & text:bonjour records
photo: Satomi Yamauchi
at bonjour records Daikanyama, 10th Oct 2015


1988年に初刊となる『Richardson』A1を日本の出版社より刊行、その挑発的なセックスマガジンは瞬く間に口コミによって広がり、世界中のコアでインテリジェンスな人々の間で話題となった。創設者であり編集長のアンドリュー・リチャードソンは、NYでテリー・リチャードソンやスティーブン・クラインといったモード界大御所フォトグラファーたちとタッグを組み、多くの著名誌でスタイリストとして活躍するも、ストレートなファッションだけでは満たされず、並行して独自の世界観を放つセックスマガジン『Richardson』を精力的に出版し続けている。 2015年10月10日には、待望の新刊A8がボンジュールレコードより発売、オリジナルのアパレルラインの新作コレクションも登場し、リリースパーティに合わせて来日したアンドリュー・リチャードソンにボンジュールレコードがインタビュー。

—A1が1998年に出版されて早17年経ちますが、『Richardson』を始めたキッカケを教えてください。

「まだ、インターネットやメールがなかったアナログの時代、ちょうどNYに移り住んだ頃に、雑誌の切り抜きや撮った写真、ポストカードやライブのチケットなどをスクラップしたような、“エフェメラ(ephemera)”をずっと作って持っていた。ティーンエイジャーなら誰にでもあるような、好奇心から集めたセクシュアルな写真やヴィジュアルも幾つかあって、友人のチャーリー(DUNE編集長 故・林文浩氏)に見せたら、ポルノマガジンを作ってみないかって提案されてね。でもそれはポルノのマガジンではなく、“SEX”についての精神的な事柄やカルチャーなどに焦点をおいたものだった。実際には、1988年に出版する一年前には準備が整っていたのだけど、出版社側が理解を示してくれなかったこともあり、出版までに時間が掛かった。ちょうどその時、東京の『Daze and Confused』が、ジェファーソン・ハック(Jefferson Hack)に『Richardson』のA1のダミーを送ったら、すごくクールなマガジンだと言ってくれて。そんなこともあって、ようやく出版に行き着いた。東京以外では存在自体も知られていなかった当時、『FACE』で編集者として働いていた友人が、『Richardson』のことを小さな記事にしてくれて、それが思っていた以上に反響を呼び、多くの人が読んで興味を持って、口コミで広がっていったんだ。皆が『Richardson』を買いたがったのだけど、売っていないし、どこで手に入るのかもわからなかったから、偶然のアクシデントが重なってハイプな現象が起きてしまった。(笑)

—バックナンバーがなかなか見つからなくて、方々へ連絡してようやく見つけることができました。

「前と比べて変わったかな?」

—歴代のカバーガールから、“セクシー”という定義や、女性のボディなど、ファッションの如く、トレンドや時代性を感じました。

「A3とA4の間には7年間のギャップもあるし、僕自身の興味や方向性も変わったのかもしれない。近年の傾向は、お金を払って理想の“セクシー”な体に改造することが当たり前になってきているよね。スティーブン・クライン(Steven Klein)が撮影した、新刊のA8のカバーを飾ったブラック・チャイナ(Blac Chyna)は、カニエ・ウェスト(Kanye West)の『MONSTER』のPVの中でニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)のダブルボディーの役をやっていたことでも有名だけど、彼女自身もファッション・アイコンでもある。元々、ニッキー・ミナージュはブラック・チャイナと出会って以来、チャイナのヘアーウィッグやボディを真似して、いまのスタイルになったんだよ。その彼女たちの独特のボディは、元来の美容整形を使った改造とは違って、トランスヴェスタイト(Trans Vestite)がするような、カートゥーンやアニメに出てくるデフォルメされたボディを手にいれるための整形をして、女性としてのパワーを表現していることだと思う。18歳の時からストリッパーでお金を稼いでいたチャイナは、その当時すでに現在のボディを手に入れているのだけど、何が面白いかって、ジョギングやジムで鍛えてキープしているわけではなく、ただ医者に行って金を払ってボディラインをキープしているところだよね。」

—それって、とてもアメリカ的ですね。

「とても、モダンだね(笑)。いままではポルノスターが『Richardson』のカバーを飾っていたけど、ポルノの時代は死んだ(終わった)と思っていた時だったのと、現代的な感覚を持った彼女の持つパワーに強く惹かれたんだ。」

—なぜ、ポルノは死んだ(終わった)と思うのですか。

「それは、インターネットが普及しポルノがフリーになったことで、業界が回らなくなりクオリティが保てなくなって刺激がないものしか作れなくなってしまった。例えば、年に2回ポルノムービーに出演したら、それだけで有名になってお金が入ってきたけれど、もうそういったサイクルは消えつつある。

—時代の変化ですね。

「ノスタルジーに浸るつもりはないし、時代が変わることは良いことだと思っているよ。インターネットは、新たな情報をいち早く掴むことができる便利なツールだからね。」

—その変化の時代の中、現在はどういったことに興味がありますか。

「現在、アメリカではオンラインとリアリティとの間に大きな変化が起こってきていると思う。その前兆として、ストリップが面白くなってきていて、カルチャーが生まれつつある。音楽もクラブで聴くより、ストリップクラブで聴く方が良いし、DJも最高だ。ドレイク(Drake)やフューチャー(Future)といった、ニュー ヒップホップ・アーティストたちのリリックにもストリップのことが書かれていて、大きなムーブメントがストリップを通じて起ころうとしている。」

Andrew Richardson『Richardson』ISSUE A8 Editor in Chief Interview

—東京では、音楽を聴きにクラブへ行くように、ストリップに簡単に入れるイメージはないですが、アメリカはストリップに対してオープンなイメージがあります。

「東京とアメリカではシステムは違うけど、アメリカでは客はお金を投げてストリッパーたちがそれを拾う、東京ではスポーツ観戦みたいに拍手をするね。アメリカのストリップは日本とはバイブが違って、ワイルドで野生的だ。NYのクイーンズに良いストリップクラブがあるけど、ダンサーはブラックかスパニッシュだよ。」

—良いストリップクラブには、白人のストリッパーはあまりいない……?

「バイブが違うよね……。ドミニカ系の女の子たちは最高だよ。彼女たちは情熱的だし、人間的で女性らしいし、アグレッシブなのが良い。」

—なるほど。 『Richardoson』に話を戻しますが、カバーガールたちの内面に迫ったインタビューは読み応えがあり、セクシュアルな事柄だけには止まらないところに共感が持てました。

「この雑誌を作りたいと思った理由は、魅了されたけど会ったことがなかったポルノスターのことを全て知りたいと思ったところから始まった。なぜ、彼女たちがその人生を歩んでいるのか、どう決心に至ったのか、その人生に対してどう感じているのか、ただ、素直に彼女たちがどうゆう人なのかを知りたいという好奇心から始めたんだ。1998年に作り始めた時には、インターネットがなかったから、グーグルで検索しても、ジェナ・ジェームソン(Jenna Jameson)のことなんてヒットしないし、簡単にインフォメーションを得ることもできなかった。有名なスターであるにもかかわらず、“ポルノスター”のインタビューを載せたカルチャー誌やポルノ誌なんて無かったし、ポルノでは、彼女たちを見ることはできるけど、人間性やすべてを知ることはできなかった。

—“セックス”に対する興味は、どのようなキッカケで芽生えていったのでしょうか。

「ティーンの時、スティーブン・マイゼル(Steven Meisel)が撮影したマドンナの写真集『SEX』の撮影でアシスタントをするチャンスがあって、客観してセックスという行為に直面し、自分の好奇心と始めて向き合うことになった。まずは、NY中のすべてのセックスショップに行って、ショップのスタッフやプロダクションの人、界隈にいる人たちに会って、話を聞きに行ったり。それまではセックスショップに行くこともなかったけど、彼らはとても親切だったし、ノーマルでチルな彼らに魅了された。スタイリストとしてのキャリアをスタートして、テリー・リチャードソン(Terry Richardson)やマリオ・ソレンティ(Mario Sorrenti)といったフォトグラファーたちとファッションの仕事をしていた頃、あらゆることに“挑発”していた。イングランドで生まれ育ち、パンクにのめり込み、ポルノやセックスといった世の中を“挑発”することに興味を持つのは、ナチュラルなことだった。それに、その当時、NYではグランジが流行っていたけれど、ドラッグもファッションの仕事も経験済みだった自分には、人生自体がすでにグランジだったから、グランジのコンセプトにはあまり魅力を感じなかったし、時間を無駄にするようなことに思えた。だからセックスやポルノの持つ“ファンタジー”に惹かれたんだと思う。触ることのできない理想のボディを持つ女をポルノを通じて見ることは、電話番号を聞いて一緒にドラッグをやって意味のない会話をするよりも、ずっと興味深いことだった。
もちろん、『Richardosn』を通して会った女性たちはクリーンではないし、、ウルトラ級の売春婦だけど、イメージとしては、日本のアニメやコミックに登場するようなファンタジーなヒロインたちに近い存在だと思ってる。だから、きっとチャーリーも共感したのだと思う。中流階級的なブルジョワなファッションの世界に挑発したかったんだ。いまでもその気持ちは変わらないよ。

—ファッションはフェイクで、リアリティをぼかすようなファンタジーの世界、仰しゃる通り、まさにブルジョワ的な世界だと思います。『Richardson』では、挑発的な表現力強めの、ファッション界を引率するフォトグラファーたちが名を連ねていますね。

「テリー・リチャードソンを筆頭にスティーヴン・クライン(Steven Klein)やSupremeで一緒に仕事をしたディヴィッド・シムズ(David Sims)は昔から知っている友人だよ。僕らは皆、世間に対して挑発的なジェネレーションで、ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)やギイ・ブルダン(Guy Bourdin)、ブラッサイ(Brassaï)などのセクシュアリティなイメージやインスピレーションを基にしたアイデアをファッションに落とし込んでいる。彼らが誕生させたセクシュアルなイメージは挑発的で力強く、興味を唆られる。“挑発”以外に興味が持てなかったから、自分のなかで“セクシュアリティ”がフォーカスされ、この分野において、彼らのような優秀なフォトグラファーから信頼と共感を得ていることは本当にラッキーだと思っているよ。

Andrew Richardson『Richardson』ISSUE A8 Editor in Chief Interview

—『VOGUE HOMME』『Harper’s Bazaar』『Interview Magazine』といった著名誌で、スタイリストとして輝かしいキャリアがあるにも関わらず、ご自身の興味にフォーカスし始めたのはなぜですか?

「ストレートなファッショ誌に興味が持てなくなった。それに、今は、ファッションのエディトリアルよりもクリエイティブなヴィジュアルを求めるクライアントとの仕事の方が面白いしやりがいがある。昔とは逆転したね。

—A7のテーマは“Death”であり、『Richardson』を続ける必要性を感じないと書かれていましたが、A8が出版されました。その経緯を教えてください。

「約4年間、毎年雑誌を出版して、A7を出版した時には、本当に疲れていた。それに、A8 は、ブラック・チャイナの返事を待ち続けていたため、出版がストップしていたんだけど、他のナンバーに比べると、現在を表しているような内容だったから、一番作りがいもあってストレスを感じなかった。他のナンバーに比べるとポリティカルで、俗性も少なくコマーシャルな要素があって、自分が表現したいことが明確だった。

—コマーシャルという言葉は当てはまるかは分かりませんが、よりファッション的な要素もあり、いままでのナンバーにはないステレオタイプのセクシュアリティが表されていると感じました。ブラック・チャイナを筆頭に、ニッキー・ミナージュやキム・ガーダシアン、アンバー・ローズなど、彼女たちは、ランウェイからゴシップまで、常に話題を振りまき、アップカミングなニュー・ヒップホップのラッパーが恋人。そしてメディアの中での彼女たちの共通点はセクシュアリティが武器ですよね。

「ドレイク(Drake)とフューチャー(Future)の新曲『Plastic Bag』のPVに出てくる札束を入れるためのプラスチックバッグ(スーパーでもらえるビニールバッグ)は、アトランタにあるストリップクラブ“Magic City”で撮影された、まさしくA8でも撮影していたものだし、いま、ツイッターやインスタグラムでブラック・チャイナはガーダシアン ファミリーのカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)と、元結婚相手のラッパーのタイガ(Tyga)とのことでゴシップを賑わしている。そう、いま言ったリアルな世界で起きていることが、A8にエディットされていて、ここまでダイレクト現在のカルチャーにリンクしたことは初めてだったから自分でも驚いているよ。

—他にはどのようなコンテンツがA8にありますか。

「今、アメリカで重要なアーティスト、マーク・フロイド(Mark Flood)に、フェイクのfacebookレイアウトを使ったページで作品を作ってもらった。これは本当に敬意を払って言うけど最悪なページだよ。(笑)
面白かったのは、彼が作品を送ってきてくれた時、これは酷すぎるとかなんとかって言われることを期待していたのか分からないけど、ただ一言、“OK, Thanks That’s Good !”って返信したら、すごく嬉しそうだったよ。クリスマスに友人たちにプレゼントとして送りたいって言ってくれたよ。主には、アメリカのストリップカルチャーが活発な3大都市、ラスベガス、アトランタ、ヒューストンをコンセプトとした、各都市にまつわるヴィジュアルを載せている。イタリア出身のコミック作家・ガエタノ・リベラトーレ(Gaetano Liberatore)は、“Essence, Dimples, and Couture Go To Las Vegas”というタイトルで未来のストリップクラブをテーマに描き下ろしてくれたし、アトランタでは、ストリップクラブ“Magic City”を撮影し、先ほどのマーク・フロイドはヒューストン出身のアーティスト。

Andrew Richardson『Richardson』ISSUE A8 Editor in Chief Interview

—17年という歳月をかけて、『Richardson』をA1からA8まで出版した中で、印象深い事柄はありますか。また、感じることはありますか。

「A1のジェナ・ジェームソン(Jenna Jameson)は、『Richrdson』を作り始めて、最初にインタビューをした、ファーストラブのような存在だし、人生最高の経験だったからよく覚えているよ。人間味があって、生まれながらスターのような存在だ。“Love”がテーマのA6のベラドンナ(Belladonna)はいままで会った女性の中で最高の笑顔を持った素敵な人だ。

—『Richardson』は今後、変わっていく可能性はありますか。

「もうすでに変わったと思うよ。A1からA3はレイアウトもエディット方法もアナログだと思う。A2を編集中に、クレジットのアルファベット順に間違えがあることに対しあることに気がついた。要するに、間違わないようにするのではなく、間違いを起こすことは間違いではないと、雑誌を編集する上で、ロジカルに縛られる必要はないという考えに至ったんだ。個人的に、A3は“ガーデニング(Gardening)”という一番クレイジーなテーマだったから好きだよ。“もし、ガーデニングについて書いたセックスマガジンがあったら面白いよね”ってオフィスで言ったジョークが、そのままテーマになった。アイデアをノートに書き連ねていったら、死、カーデニング、自然、花、すべてがセックスと繋がり、共通点を見つけ出すことができた。日本も同じように、性的な事柄を抑える傾向があるけど、今から約100年前のビクトリアン時代のイギリスでは、禁欲的な生活のはけ口として、ガーデニングが流行っていた。自然や本能への執着と文明や体制への執着は対照的で、セックスは本能的でコントロール不可能であるがゆえ、社会秩序を壊すパワーがあると考えられ、それがガーデニングへの欲求に繋がったという答えを見い出す、実験的な編集行為に魅了された。インターネットを使ってリサーチをする以前のことだったから自分でさえ予測しなかった結果に至ったことが驚きだった。

—そういった予想がつかないオリジナリティがあるからこそ、『Richardson』が多くの人を魅了するのかなと感じます。

「そう願ってるよ。常に豊かな思想を持って手掛けることを心がけている。ラッキーだったのは、自分が何をしているのか、編集のやり方さえも分からなかったことが良い結果に繋がったと思ってる。ただシンプルに、自分が好奇心を持って取り組めることを自分のメソッドでやりたかった。だから、『Richardson』には、他には類のないオリジナリティがあるのだと思うよ。

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