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2016/11/08 UP

“KILLING TECHNOLOGY” Pedro Winter, Melchior Tersen, and Nicolas Poillot Interview

Interview Mayumi Yamase
Photo Shoot Kumasaki
at THE PARK・ING GINZA, 21st Oct 2016


フレンチエレクトロシーンを牽引する ED BANGER RECORDSのオーナーでもあり、出版を行うHEADBANGERS PUBLISHINGも運営するペドロ・ウィンター。今回彼が出版を決めた『KILLING TECHNOLOGY』は若き新鋭フォトグラファー、メルヒオール・テルセンが個人的にもファンである、メタル音楽の象徴とも言えるパッチジャケットを撮り下ろしたもの。ETUDES STUDIOの手によってミニマルで洗練されたデザインに落とし込まれた、総重量3kgもある写真集出版の立役者3人に、制作について話をうかがった。

-まず簡単にそれぞれの役割を教えてください。
ペドロ・ウィンター(以下、ペドロ);メルヒオールがフォトグラファーで、エチュードスタジオのニコラがアートディレクション。彼はこの本のデザインやコンセプトを考えてくれました。そして、私ペドロが編集、発行人です。

-どのようにして出会い、このプロジェクトを始めることになったのですか?
ペドロ;5年ほど前にパリで、若く勢いのあるアーティストが集まったグループ展を見に行ったんです。メルヒオールもそこに参加していて「いいな」と思った作品が彼のものでした。それでウェブサイトなどで彼の作品をチェックしていると、私の弟が運営しているパリの小さなギャラリーでも彼が展示していたのを知りました。その後すぐ初めて会い、その時にDIYで作ったZINEのような本を見せてくれたんです。そにはここに写っているようなパッチジャケットを着た人々の写真がたくさん並んでいました。メルヒオールは「パッチジャケットの写真を撮るプロジェクトをやっているんだ」と話してくれ、私もすぐにそのアイデアが気に入って、どうにかしてちゃんとした本にしようと決めました。だから、実はもう随分長い時間がかかっています。出会ったのが5年前で、本を作るためにちゃんと動き始めたのは、2年前ですかね。メルヒオールなんて6年前からヘビーメタルのフェスティバルに行ってはジャケットを撮り続けています。長い道のりでしたね。

ニコラ;私とペドロは以前も一緒に働いていて、自然な形でこのプロジェクトに関わることになりましたね。ペドロが声をかけてくれました。

ペドロ;はい、私はエチュードスタジオが発行している本やデザインがすごく好きなんです。そもそもメルヒオールと一緒に働くこと、そしてパッチジャケットという被写体もとても面白かったですね。パッチジャケットは見た目に訴えてくる情報量がとても多いんですよね。それとは反対に、エチュードスタジオが作るものはとてもミニマルでシャープ。だから、一見ミニマルに見えるのですがとっても強いインパクトが残る作品に仕上がりました。

ニコラ;素材の数がとても多かったので、それを理解(消化)することから始めました。

ペドロ;事実、私たちはメルヒオールが吐く(アイデア)ものを受け止めて消化(理解)する係りでした。君がオナラをして、僕らが……これは良い例えが浮かびませんね(笑)。

-“KILLING TECHNOLOGY”のコンセプトについて教えて下さい。
メルヒオール・テルセン(以下、メルヒオール);まず、小さいものに目を向けたいと思ったんです。世界が抱えている問題のような大きいことを扱うのは難しいことです。だから、まさにこのパッチのような小さいことを扱いたいと思ったのが始まりです。こんな大きな本を持って、日本に来てメタルパッチについて話せるなんて、うれしいことです。

ペドロ;彼は小さいけれど普遍的なテーマで、現代のデジタル中心の思想に訴えかけているのだと思います。

メルヒオール;私は文化があるものが好きなんです。それこそ普遍的で時間が経っても変わらなくて、シンプルなものです。この本は見た目はシンプルではありませんが、シンプルなテーマを扱っていると思います。

ペドロ;サイズは大きいし写真の数も多いですが、すべてメタル好きな人たちとそのパッチジャケットの写真というシンプルな作品です。

-この本で何か伝えたいメッセージなどはありますか?
メルヒオール;特にありません。私は見る人に先入観を持たずにフリーであってほしいし、自分自身で作品を縛ることなくフリーにしておきたいと思っています。見る人が自由に何かを感じてくれればいいと考えて作っています。この本を見た人がメタルジャケットを好きじゃなかったとしても、その人は着なければいいし、そこに何も問題はありません。私自身はもちろん好きで7着持っています。すべてパッチで埋まっていなくて、埋めていくのがいいんです。パッチを縫うのも好きですね。

ペドロ;だから、もし服に穴を見つけたらぜひ彼のところに持ってきたらいいと思いますよ(笑)。

-メタル音楽にハマったきっかけを教えてください。
メルヒオール;私はメタル音楽がきっかけで写真を始めたんです。高校のときに、友人とメタルのライブによく行っていたんですが、最初の1、2年は全然入り込めず、楽しめませんでした。ですが、カメラを持ってライブに行くようになったらどんどん楽しくなってきたんです。カメラを通してメタルを見ることでいつもと違って見えたのがきっかけだったと思います。

-どのようにして、ジャケットの写真を集めたんですか?
メルヒオール;小さなカメラと白いボードを持ってコンサートに行って、メタルジャケットを着ている人を見たら声をかけて、その場で撮影する、とってもシンプルな方法です。撮らせてもらった人には、名刺を渡して、「もしこの写真が欲しければ連絡ください」と。みんな気前よく撮らせてくれましたよ。

ニコラ;この本は3つのチャプターに別れていて、この部分は彼のパーソナルなコレクションです。

メルヒオール;私はカタログが好きなんです。集めることも好きですしね。カタログから何かを学ぶこと、見つけることができると思うし、メタルパッチを扱った本は今までありません。個人的にはメタルパッチはアートとして扱われてもいいと思っています。

ニコラ;それにメタルパッチという題材は、そのユニークな見た目からもメタルを始め、ファッションやグラフィックなど、どんどん違う分野にも広がるものだと思います。

-本誌のアートディレクションにおいて、なにかコンセプトはありましたか?
ニコラ;写真の量が多かったこともあって、まずは色や種類で別けて整理するとこから始まりました。順番を決めて、その後にデザインという工程です。デザインはパッチの形とリンクするように正方形を意識しました。そして、先ほども話に出ましたが、パッチひとつひとつの印象が強いのでデザインはなるべくミニマルにしました。アーカイブやカタログのような印象も与えたいと思いましたし、500冊と少ない冊数なのでマイノリティーな感じも出ればいいなと思います。

-bonjour recordsとの取り組みについて教えて下さい。何がきっかけだったのでしょう?
ペドロ;bonjour recordsのことは随分前から知っていました。私はED BANGER RECORDSを14年やってきたこともあって、bonjour recordsはいつも日本と繋がるための「鍵」のような存在でした。そして、今回の「KILLING TECHNOLOGY」の出版でも、このPARK・ING GINZAという場所、展示やパーティー、bonjour recordsに関係している人々との出会いも含め、私たちに完璧にフィットしていると思います。それにbonjour recordsが行っている“アートと音楽を繋げる”ということは、まさに私たちが目指していることでもあります。私は出版社として、メルヒオールの写真、ニコラのアートディレクション、そしてbonjour recordsのカルチャー、すべてがパーフェクトにマッチしているんです。
この本はメタルファンの方にはもちろん気に入ってもらえる思いますが、ヒップホップやグラフィックが好きな人、老若男女、誰でも興味を持てると思います。ヘビーメタルのパッチに使用されているイメージは、それこそアートで今のカルチャーの中に溢れているものです。だから、このプロジェクトもアートと音楽というカルチャーを繋げるとても良い機会になったと思います。こうやって日本に来れたこと、bonjour recordsと一緒に働けることに感謝でいっぱいです。今回のために作ったカセットテープは、片面は私、もう片面はメルヒオールが作成したヘビーメタルの音楽が入っています。こういった取り組みができて、本当に嬉しく思います。

-THE PARK・ING GINZAの印象はいかがですか?
ペドロ;日本以外の国では絶対にできないと思うし、最高に良いスペースですね。アイデアも好きだし、私たちのコンセプトにもぴったりな場所だと思いました。

-日本の印象はいかがですか?
メルヒオール;日本に来るのが夢だったので、とても嬉しいです。本当にいろんなものがありますよね。漫画、カメラ、文房具。日本の小さなキーリング一つにしてもフランスだと、「何それ?!」と話題になりますが、ここではそういったものが溢れていて、何を買ったらいいかわかりません(笑)。ここに居ることと街を歩くことだけで、もう十分満喫しています。

-日本のお客さんにメッセージをください。
ペドロ;日本に来るたびに戻ってきてよかったと思います。日本人は他の国のカルチャーから影響を受けていることも知ってますが、私たちがここにきて受ける影響はそれ以上のものです。日本人がファッションや音楽、漫画に入れ込む姿勢と情熱を見ると、本当にカルチャーの中に生きているという印象を受けます。そのエナジーがまた誰かに影響して、次のカルチャーが生まれていきます。そんな良い連鎖が起きていると感じます。こうやって、この本を日本に持ってきて一緒にパーティができるなんて本当にこれ以上に幸せなことはないと思います。




ペドロ・ウィンター:Daft Pankのマネージャーとして勤務後、2003年に自身もBusy Pとして活動しJustice、Breakbotなども所属するED BANGER RECORDSを設立。

メルヒオール・テルセン: 1987年、パリ生まれ。パリを拠点にファッション、カルチャーの分野で幅広く活躍する。主なクライアントにVICE、Dazed I-D、エドウィンなどがある。

ニコラ・ポイヨ(エチュードスタジオ):パリとニューヨークを拠点に2013年に設立。ファッションブランドを始め、デザイン、プロデュース業などを行う。

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