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2012/06/22 UP

BOYS NOIZE

保守派エレクトロを追放したボーイズ・ノイズ
自由なサウンドを求め、次なる革命に着手

photo:Hiroaki Sakano text:bonjour records translation:Maiko Nishikawa


ありふれたダンス・ミュージックに奇襲をかけるかのごとく、エレクトロのその遥か先を突き進んできたボーイズ・ノイズ。近年は他アーティストへの楽曲提供やリミックスワークでも手腕を発揮してきた彼がいよいよ、自身のオリジナル・アルバムを年内に発表するという。テクノやロック、アシッド・ハウスなどを巻き込み、強烈なカウンター・パンチを放った過去二作のアルバム「Oi Oi Oi」と「POWER」。その次なるサウンドは、どんな前衛主義を備えているのか。5月4日に開催されたbonjour recordsのオフィシャル・イベント『Bonjour Music School』。そのステージに立ち、1000人以上のクラウドを熱狂させたボーイズ・ノイズ。彼の現在と進化を探る、独占インタビュー。

BOYS NOIZE(BNR, BERLIN)
ドイツ出身のアレックス・リダによるソロ・プロジェクト。ジャスティスやデジタリズム、ソウルワックスなどとともに、2000年代のエレクトロ・ムーヴメントを牽引し、07年に発表したデビュー・アルバム「Oi Oi Oi」によって、ダンス・ミュージック界の最前線へと登り詰める。その作品はテクノ的なアプローチをエレクトロに導入し、いち早く次世代のサウンドに到達。同作から“& Down”や“Oh”などといったクラブヒットを連発した。そして09年にセカンド・アルバム「POWER」をリリース。ヒップホップ的なカットアップ手法、アシッド・ハウス、ミニマル・テクノなどを飲み込み、またしても新領域を開拓する。以降、世界各国のビッグイベントに出演する一方、ジャスティスやブロック・パーティ、スヌープ・ドッグやブラック・アイド・ピーズなど、多様なアーティストのリミックスも手掛けてきた。また、2010年にはゴンザレスのアルバム「Ivory Tower」をプロデュース。縦横無尽に音楽シーンを駆け抜け、いまやケミカル・ブラザーズやアンダーワールド、2MANYDJ’Sなどと並び称されるスーパースターである。

──まず、日本に戻ってきてくれて、ありがとう!

「久々の来日だから、僕もうれしいよ。海外で初めてのギグを日本だったんだ。それ以来、ここで過ごす時間はいつも楽しい。特に、日本でのDJは僕にとってスペシャルなものなんだ。みんな、アンダーグラウンドな音楽をよく知っているだろ。エレクトロニック・ミュージックの知識が深いクラウドに向けて、DJプレイするのは本当に素晴らしいことだよ。特に日本でのギグは、自由を与えてくれるんだ」

──自由というと。

「実験的なことをする機会を僕に与えてくれるということかな。例えば、まだリリースされていない最新トラックもプレイできるし、もっともアンダーグラウンドなトラックだって、日本ならばプレイできるんだ。つまり、自分のDJプレイに制作をかけなくていいのさ。実際、まだどこにも出ていないだろうと思ってかけた曲なのに、日本のクラウドはすでに知っていたこともあったぐらいだよ(笑)。そんな場所は、他の国ではなかなかないからね。僕が求める“自由”が日本にはあるんだよ」

──DJとしての醍醐味を楽しめるんですね。

「そうそう。感覚的なものだから説明するのは難しいんだけど、僕は何よりもまず『DJなんだ』って実感できるね。ただ、サウンド・プロデューサーとしての自分もすごく重要だよ。DJとサウンド・プロデューサー、どちらも僕にとっては音楽を作るということ。だから、両方が僕の音楽活動には欠かせないし、比較することもできないね」

──DJと楽曲制作は連動しているということですか。

「いや、僕はどちらも大好きな活動だけど、その2つはまったく違う世界だと思っているよ。DJとして自分の好きな音楽を流すときは、その音楽がいかにフレッシュか、が大事なんだ。かたやサウンドを制作するときは、たった1人で作業するから、誰からもフィードバックはもらえない。クリエイティヴかつ私的な作業だよ」

──DJもサウンド制作も自己の表現でありながら、向き合う姿勢やマインドは異なると。

「うん。うまく言えないけど、僕は自分が好きで楽しいと思うものを信頼しているんだ。僕にとって“音楽は楽しいもの”ということだけはハッキリしている。それだけで十分なのかもね。だから、あんまり意図しすぎるのもよくないのさ」

──ただ、あなたはDJとしてディープなサウンドを追求することもあれば、サウンド・プロデューサーとしてメジャー・アーティストの楽曲を手掛けることもある。となれば当然、マーケットなどを意識せずにはいられないと思うのですが。

「面白い指摘だね。確かに、一度メジャーな仕事をするとマーケット寄りの考えになって、音楽以外のこともたくさんしなくちゃいけない。だけど僕は、あくまでも自然体で音楽を作るようにしているよ。DJのときだって、同じアプローチだね。素晴らしいパーティーを作るために、最新のヒット曲で観客を喜ばせなくちゃいけない、って考えは持っていない。自分に対して誠実でいれば、クレイジーなことをする必要もないんだ。それにじつは、世界的に有名なDJになりたいと思ったこともないよ。たまたま僕は、いまの音楽シーンに馴染みやすい存在だった。ごく自然にいまの状態になったと思うよ。結局、楽しくやることが僕のいつものスタイルかな」

──では、自身のオリジナル楽曲を作る際は、どのようなプロセスですか。

「自分の音楽を作るときは、毎回、違うプロセスだね。音源があったとして、頭に一文字程度の言葉が浮かぶこともある。そして、その一文字からトラック全体を作り上げたりね。でも、ほとんどのトラックはサウンドから始まるよ。スタジオではまずサウンドを探すんだ。自分が気に入ったサウンドに出会うまで、いろんな機械やドラムマシーンで遊ぶ。そして1つのサウンドが見つかったら、そこから次のサウンドを導くんだ。だからこそ、自分が作る音楽にはいろんなスタイルがあるんだと思う。すべてがクレイジーなベースラインではないけど、まったく違う文脈のサウンドになるから面白いよね。つまり自由に音楽を作れるし、今日はハウスで明日はテクノを作る、ってことにならないんだ。もっと自由で、オープンさ!」

──いまは、どういったサウンドを探していますか。

「いまの僕にとって新しいサウンドは、ルーツに戻るということかな。すごく若くて、素晴らしい作品を作るプロデューサーがたくさんいるなかで、まったく新しいものを作ることはとても大変なんだ。エレクトロニック・ミュージックは、すでにありとあらゆる形で表現され尽くされているから、どうやって組み合わせるか、ということの方が大事だよね。最近、作っている楽曲は、僕の一枚目のアルバム『Oi Oi Oi』(07年)に少し似てるんだ。ちょっとロックな感じだね」

──00年代後半にエレクトロのビッグバンが起こったとき、あなたは“エレクトロの破壊王”とでもいうべき存在でした。その「Oi Oi Oi」もすでにエレクトロの一歩先を行っていたというか。

「今後も“破壊王”になれるかはわからないけど(笑)、あの当時のサウンドをそのまま再現しようとしているわけではないんだ。それこそ、次のステップにいっているわけだからね。ごく自然にルーツに立ち返って、そのルーツをまた新しい形のものに進化させたいなって。昔もいまも、常にオープンで挑戦し続けているだけさ。そうじゃないと、すべて行き詰まって、退屈になるんだよ。僕自身が刺激されない音楽を作ることはできないからね。あと、プロデューサーやDJにとって最も難しいことは、“リスクを恐れない”っていうこと。多くのDJは他の有名DJを真似して、彼らが使ったトラックと同じものを選びがちなんだ。だけど、独自のスタイルとサウンドを見つけたり、ヒット曲に影響を受け過ぎないことが必要。そうすれば、そんなに深く考えなくてよくなるさ。だって、すでに自分のオリジナリティを持っていれば、自ずと前進して、いろんなことを試したくなるからね」

──「Oi Oi Oi」、「POWER」(08年)に続くニュー・アルバムも、ボーイズ・ノイズのオリジナリティが詰まっていると。

「新しいアルバムは2年前に制作に取りかかったから、まさに僕の2年間が凝縮されているよ。ニュー・シングルが7月と8月と9月に出て、アルバムは10月にリリース予定なんだ」

──ちなみに今回の来日では、bonjour recordsでショッピングしたそうですね。

「僕にとって、レコード・ショップは自分のベッドルームの次に大好きな場所だよ(笑)。若い頃はいつもそこで時間を過ごした。けど、残念ながら、近頃は変わったよね。閉店したショップも多いし、カルチャー全体がインターネット中心だからね。昔はいろんな人と出会って、彼らと音楽の話をする小さなコミューンみたいな場所だったのに。そう、何よりもまず、新しい音楽を見つけられる場所だった。bonjour recordsはそういう空間であり続けてほしいな」

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