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2012/03/30 UP

DEXPISTOLS

DEXPISTOLSが照準を定める
音楽とカルチャーの次なるクロスポイント

photo:Hiroaki Sakano text:bonjour records


“いま”を的確に捕獲した時代の寵児として、ダンス・ミュージック界を疾走してきたDEXPISTOLS。その俊敏性や柔軟な感性で生み出されるサウンドは、クロスオーバー化したエレクトロニック・ミュージックの象徴でもあり、クラブ愛好家〜ストリート・ファッションに熱を上げているキッズにも支持されてきた。そんな彼らが先日、初のオリジナル・アルバムとなる「LESSON.07 “Via”」を発表。新曲の他、Sébastien Tellier“Divine”やヒップ・ハウス大名盤:Bob Sinclar feat.Sugarhill Gang“Lala Song”のリミックスなども収録した本作は、DEXPIXTOLSのどのような理念が込められているのか。DJ DARUMAがその真相、さらにはDEXPISTOLSの次なる戦略を明かす。

DEXPISTOLS
20XX年、進化したテクノロジーにより、東京ストリートカルチャーシーンが生み出した2ピースDJバンド、DEXPISTOLS。リミキサー、プロデューサーとしても活躍するDJ MAARと、デザイナーとしてもキャリアを続けるDJ DARUMAの2人組。4台のCDJを駆使しサンプラーや楽器のように操り、エレクトロニック・ミュージックを軸に、ヒップホップやロック、ダブステップなどを縦横無尽にプレイしている。2008年には自らが主宰するレーベル“ROC TRAX”を本格始動させ、「ROC TRAX presents LESSON」シリーズを継続的にリリース。またZEEBRA、THE LOWBROWSなど、メジャー、インディ問わず様々なアーティストのREMIXも手掛けている。

常に革新的なスタイルを実践し、斬新なアイディアを提案する革命児。彼らが2012年3月、待望のフルアルバム「LESSON.07 “Via”」を発売した。

──先日、最新作「LESSON.07 “Via”」が待望のリリースを迎えましたが、周囲の反応はいかがですか。

「正直なところ、まだリスナーの反応をキャッチできる状態ではないですね。というのも、DEXPISTOLSの音楽は作品のみで終結するものではないと思うんですよ。アルバムの楽曲をパーティでプレイしてこそ、ようやく本当の価値が出てくるというか。今後、『LESSON.07 “Via”』を引っ提げて、全国をツアーする予定なんです。そこでダンスフロアのダイレクトな反応を感じてみて、作品の評価が見えてくると思う。ただ、僕たち自身は今作を作り終えて、かなりの手応えは感じました」

──そもそも「LESSON」シリーズは、“パーティの楽しさをレクチャーする”という命題を持った作品。そういう意図からは、一切のブレがないようですね。

「僕らはやっぱり、ダンスフロア密着型のアーティスト。だから、作品を生み出すときも、パーティと切り離すことはできないんです。そういう意味でも、今作には僕らのサインを書けるスペースを作ったんです。特に地方都市にDJで行くと、ありがたいことに『サインをください』って言われることが多くて。DEXPISTOLSの作品を聴いてもらって、実際にクラブにも来てもらう、という一連の流れをもっと出していきたいんですよね」

──今作はオリジナル・アルバムと銘打ちながら、DEXPISTOLSが他アーティストの楽曲をリミックスしたものもあれば、DEXPISTOLSの楽曲を気鋭のクリエイターがリミックスしたものもある。いわゆるオリジナル・アルバムという固定概念を壊していて、リスナーに意外性を与える作品だと思うのですが。

「その指摘は僕らも実感しています。DEXPISTOLS初のオリジナル・アルバムと銘打っているからこそ、なおさら違和感を持つ人もいるだろうなって。だけど、オリジナル楽曲だろうと、リミックス曲だろうと、今作の収録曲にはあくまでも僕らのアイディアやMAARの楽曲制作のスキルが詰まっていると思う。だからこそ、DEXPISTOLSのオリジナル・アルバムと呼ぶべきだろうなって」

──確かに、収録曲のいずれもがDEXPISTOLSのアイデンティティを感じさせます。

「それに今作は、いまの時代だからこそ、やれる手法だとも思うんですよ。アーティスト・シャッフルというか、今作の収録曲“Fire feat. Zeebra”は、Zeebraさんのアルバム『Black World/White Heat」にも収録されている。あと、“Mid Night City feat. RYO the SKYWALKER”も今後、RYO君のアルバムに収録される予定もあって。そういうアーティスト間で、同じ楽曲を交換していくのは、いまっぽくて面白い。リミックスに関しても同様で、原曲にリミキサーの手が加わった時点で、その曲はリミキサー自身の作品にもなり得ると思うんですよね」

──ダンス・ミュージックのクリエイターとして、リミックスという手法へのプライドみたいなものもあるのでしょうか。

「確かに、そういう部分もありますね。リミックス曲って、わりと刹那的で、人の耳に触れないことも多くて。だけど僕たちはリミックス作品も価値があると思っていて、シングル並みに破壊力のあるものも結構多いんですよ。だからこそ、リミックス盤という形ではなく、オリジナル・アルバムにリミックス曲を収録しても、僕らにとって違和感はなくて」

──しかも、どのリミックス曲も過去作品ながら、“いまのDEXPISTOLSのサウンド”と呼べるものばかり。新鮮味をまったく損なっていませんが……。

「ねっ、不思議ですよね(笑)。多分、それは過去の楽曲にも“DEXPISTOLSらしさ”が出ていたからだと思うんです。時代ごとの動向、トレンドを踏襲したかたちで、自分たちの音に仕上げていたんだなって。ただ、実際に曲を作っている当初は、『一歩、先をゆくサウンドを作ろう!』なんて意識は全然ないんですよ。それにじつは、僕たちは流行にドンズバでハマっていないというか。実際、エレクトロがブームになっていた当時なんて、DEXPISTOLSはいわゆるエレクトロ・サウンドをすでにプレイしなくなっていたし、作ってもいなかった。だから、僕らの音楽はわりと普遍的なものとして認知されていて、ダンスフロアで体感しても古さを感じさせないのかなって」

──確かにDEXPISTOLSは、エレクトロ的なアプローチは継続しながらも、数年前からダブステップなどのベース・ミュージックも吸収していましたよね。

「同じことを永遠と繰り返していたら、やっぱり飽きるんですよ。DEXPISTOLSの音楽をアップデートして、『こんな方向性がいまは面白い』というものを模索してきた結果、自然と“変化”を繰り返してきたのかなって」

──そんな“変化”を象徴する楽曲の1つが、今作のリード曲“Mid Night City feat. RYO the SKYWALKER”。DEXPISTOLSの視野の広さを体現したようなサウンドだなと。

「ぶっちゃけ、この曲はうまく説明できない(笑)。だけど、なんかいいんですよ! BPM的にはムーンバトン(チョップド・アンド・スクリュードの手法を使用したダンス・ミュージックの一種。レゲトンのBPMと酷似しながらも、ダブステップ的なベース感もミックス)なんですけど、僕らがストレートにムーンバトンを作っても面白くないなって。そうしたら、MAARがこのトラックを作ってきてくれて、そこにRYO君の声が入ったら、すさまじい攻撃力が出たんですよ。ダンスフロアでめちゃくちゃ破壊力を発揮すると思いますね」

──他にも、「LESSON.02」で使用していた“Try Me”(Suzi Kimによるグランドビードの名盤)のカバーなども収録されていますが。

「“Try Me”は僕とMAARにとって、青春の1曲なんですよ。そこでカバーをやるアイディアが出たときに、DEXPISTOLSの根底にあるこの曲が真っ先に挙がって。それに“Try Me”は日本の曲だし、僕らだからこそカバーできる曲があると思ったんですよ。同様に、ACOちゃんとカバーをやろうという話になったときも、曲の選択肢はたくさんあったけど、『どうせやるなら、“Greateful Days”のカバーに挑戦してみない?』ってことになって。ただ、“Greateful Days”は結構アンタッチャブルな曲でもあるでしょ。でも、KJ(降谷建志)さんもZeebraさんも『DEXPISTOLSだったらいいよ』って言ってくれたみたいで」

──とはいえ、“Greateful Days”は完成され尽くした曲ですよね、音楽的にもイメージ的にも。

「そう、ある意味、いじってはいけないほど完成されている。けど、MAARがアイディアを出して、ラッパー2人の掛け合いをオルガンとストリングスの掛け合いに変換して。さすがMAARだな、って思いましたね。当然、うまくハマるかどうか、リスキーな部分もあったと思うんですけど、予想外な手法で攻めるのもDEXPISTOLSっぽいなと」

──そういうDEXPISTOLSの奔放なスタイルが、ZeebraさんやKJさん、ACOさんやRYO the SKYWALKERさんなど、音楽シーンの重鎮たちに認められているという証明でもありますね。

「ホントうれしいし、ありがたいです。ちなみにRYO君との曲が出来上がったあと、たまたまMIGHTY CROWNとFIRE BALLの皆さんと一緒のイベントに出る機会があって。そこで『RYO君よりも先に、俺たちと曲を作ってほしかったな〜』なんて言ってくれて、マジでアガりましたね! 現場で経験値を上げてきた僕らだけど、幅広い音楽シーンのアーティストの方々がDEXPISTOLSを認知してくれていることがわかって、すごく自信になりました」

──まさに現場発信で、DEXPISTOLSの名が広まったと。

「結局、パーティで培ったものしか、形にできないんですよ、僕らは器用じゃないんで(笑)。特に、MAARはクリエイターとして、現場で活きるサウンドを真剣に作り出そうとしている。作業している様子を見ているとわかるんですけど、“生みの苦しみ”と正面から向き合っていますね。僕はどちらかというと、デザインなどするときに終わりまでの行程をある程度考えてから、ノリで作業に入るので、わりとスムーズに制作完了を迎えるんですよ。かたや、MAARはとことん突き詰めるタイプだから、DEXPISTOLSの核がブレないんだと思いますね。“DEXPISTOLSが鳴らすべき音”をしっかりと意識している。例えば、DJ MAARのソロ作品として作ったら、『LESSON.07 “Via”』のようなサウンドにはならないはず。僕もMAARも“DEXPISTOLSのキャラクター設定”を定めたうえで、そのなかにある“新しさ”を表現しようとしているんだと思いますね、きっと」

──そのキャラクター設定とは。

「例えば、ダンスフロアに投下できる曲を生み出す存在であり、キッズにも刺激を与えることができる存在じゃないといけない、みたいなことですかね。あと、“帰るべき場所=クラブ”をいかに大切にしていくか。だから、安易にセルアウトなことをしたら、クラブのファンもキッズも離れていってしまうということもわかっていて。なんというか、DEXPISTOLSはギリギリで乳首を出していないんですよ(笑)。グラビアに喩えると、横チチは見せているんだけど、フルヌードにはならない。つまり、メインストリームなシーンに突っ込もうと、単にセルアウトなことはしないし、DEXPISTOLSの核心を曲げることはできないだろうなって」

──そんなギリギリなラインを攻めてきたDEXPISTOLSですが、数年前は“東京”“ニュースクール”などといったキーワードが付随していましたよね。現在は、そういった部分を意識していますか。

「いまはもう意識しなくなりましたね。けど、“Mid Night City feat. RYO the SKYWALKER”のPVを作ったんですけど、それを観た人から『東京っぽいね』って言われることが多くて。だから、自然と“東京”を体現できるようになってきたのかも。それにもともと“東京っぽさ”ってすごく曖昧な部分があって、僕ら自身もうまく言葉で伝えられないんですよね。だから、自分たちの行動や作品で“東京っぽさ”を示すしかない。以前、DJ EMMAさんが『東京っぽさとは、雑多なんだけど洗練されていること』とおっしゃっていたんですけど、まさにそうかもなって思ったんですよ。東京の人は、エディット能力がすごく高くて、外から入ってきた文化を自分たちなりに編集して、今度は外に向けて発信している。その点に関しては、DEXPISTOLSがもっとも得意とするところなんですよね」

──では、いまのDEXPISTOLSがやるべきことというと。

「以前は、東京のシーンを盛り上げる、次の世代のDJやクリエイターを生み出したい、っていう気持ちでやってきたけど、その目的はある程度、達成したかなって。いまは間違いなく、DEXPISTOLSは次のタームに入ってきていると思うんです。クラブ・カルチャーの裾野を広げて、敷居を下げましょう、っていう動きをするときではない。今度は、ダンス・ミュージックの価値を高めたり、DEXPISTOLSの音楽性やイメージを磨き上げることも必要なのかもなって」

──ちなみに、DARUMAさんは現在、オリジナル・ブランド:CREPEMANを展開中。ソロ活動におけるテーマはどのように考えているのでしょうか。

「じつは僕、自分のことをクリエイターだとかアーティストだとか思ったことが全然なくて。音楽活動においてもDJ的なアプローチが主な部分だし、いろんなものを編集しているだけなんですよ。人と人をつなげたり、カルチャーを結びつけて、新たな角度から見せてみたり。そういうことは積極的にやっているけど、クリエイターみたいに何もないところから物事を生み出すことはできていない。MAARはゼロから音楽をクリエイトしているから、ミュージシャンであり、アーティストだと思うんです。だけど僕は、全体をコントロールするのが好きだし、自分的にも向いている」

──確かに、DEXPISTOLSのスタイルに加え、DARUMAさんとMAARさんそれぞれのスタイルも明確になってきたような印象があります。

「MAARは音楽、僕はファッションといった具合に、やりたいことを具現化できる地盤が固まってきた感じがしますね。僕の場合はファッションと言っても、既成のボディを用いて、プリントで勝負する手法がいまは面白いなって。ステッチを考えて、シルエットも考えて……みたいなイチから作り出すデザイナー的な仕事は、性に合わないみたいです……。過去10年間、ROC STARというブランドをやって、やっとわかりました(苦笑)。言葉は悪いかもしれないけど、もっとラフにファッション・カルチャーに向き合いたいなって。だからいまは、CREPEMANのロゴを全面に押し出すことを考えていますね。例えば僕が中学生のとき、STUSSYやGOODENOUGHのロゴがすごくかっこよく思えていた。どうしてかっこよく見えていたかといいうと、ロゴの背景に、DJやクラブ・カルチャー、スケート・カルチャーとか、いろいろなものが透けていたからだと思うんですよ。そのロゴが付いた洋服を着ることで、そのブランドのアティテュードも纏うことができるみたいな。けど、いまの東京にそういう見せ方でロゴを押していくブランドはほぼ存在しない。海外ではSupremeなどがそういうスタイルを誇示しているけど、東京にはないからこそ、やってみたいんですよ。それに、90年代初頭の雰囲気も戻ってきているし、絶好のタイミングかと。DJ DARUMAのアティテュード、DEXPISTOLSのスタイルなどをCREPEMANのロゴに封印する——そんなファション・アイテムを作りたいな、って」

──まさにカルチャーを編集するキーマンであり、戦略家ですね、DARUMAさんは。

「人生って、いわばゲームみたいなものだと思うんです。人生をハッスルするために、どうゲームを進めていくか。アーティストやクリエイターは、自分の人生をドラマチックに演出していけるけど、僕にはそんな能力はホントないんですよ(笑)」

──いやでも、いろんなカルチャーをミックスする『bonjour weekend』においては、DARUMAさんのコーディネイト能力を発揮しやすい場かもしれませんね。

「うん、僕自身もすごく楽しみにしています。音楽やファッションなど、いろいろなものが結びついて、面白くて新しい“何か”が生まれたらいいですね」

 
DEXPISTOLS 「LESSON.07 “VIA”」 
tearbeidge ¥3,000(税込)

bonjour weekend vol.1
feat. DEXPISTOLS

2012.4.1 SUN@bonjour records daikanyama
OPEN 13:00 〜 CLOSE 19:00
Entrance Free

--MUSIC--
DEXPISTOLS/OFF THE ROCKER(SHINICHI OSAWA + MASATOSHI UEMURA)/ROC TRAX Crew/A.D.S.R. crew and Surprise Guests

--DRINK--
Ucess the Lounge/Bonjour Brown Water

--FOODS--
sync/IZACA BAR

--MARKET BOOTH--
DEXPISTOLS store/A.D.S.R./bonjour records boys

--SPECIAL BOOTH--
Reflexology(フットマッサージ)

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