FOCUS

2012/12/11 UP

KENJI TAKIMI × TETSUYA SUZUKI(honeyee.com / .fatale)

ヒューマンな快楽を求めて、DJカルチャーを読解
『Bonjour Music School feat. honeyee.com』開催記念トークセッション

text by bonjour records photo by Kenta Suzuki

 12月14日(金)に渋谷のSOUND MUSEUM VISIONで開催されるbonjour records主催『Bonjour Music School』。その前哨戦となる、貴重なトークセッションが実現した。今回のイベントでコラボレーションするウェブマガジン、honeyee.com(ハニカム)の編集長であり、昨今はDJとしても活躍する鈴木哲也氏。そして、国内のダンスミュージック・シーンを緩やかに操作してきたインディペンデント・レーベル、Crue-L Recordsの主宰者であり、海外のトップDJからもその才能を高く評価される瀧見憲司。この2人が、『Bonjour Music School feat. honeyee.com』の詳細を明かす。さらに、かつてのDJ文化への“郷愁の念”や現在のクラブ・イベントへの“アンチテーゼ”も含め、来るべき音楽カルチャーの“新地平”を解読する。

鈴木哲也(以下、鈴木)「もうすぐ開催される『Bonjour Music School feat. honeyee.com』では、瀧見さんがステキなDJプレイをきっと聴かせてくれますよ。だって、先日発表された瀧見さんの新プロジェクト:Being Boringsの作品もホント素晴らしかった。ハニカム大推薦盤です」

瀧見憲司(以下、瀧見)「おかげさまで、CDショップのバイヤーや音楽メディアの人からは好評で。だから、この場を借りて、bonjour recordsでもその作品『Esprit』を扱ってもらおうかと(笑)」

──イベント当日、「Esprit」収録曲をプレイする予定は。

瀧見「どうだろうね。このイベントの実際の内容や客層を見てからの判断かな。最近のクラブ、特に大きな箱では、やはり一般層を巻き込まないと、商業的にイベントが成功しないでしょ。だから、こういう大きなパーティでの選曲やプレイはある程度、その場での判断が重要なんだよね」

鈴木「そういう意味では、bonjour recordsがイベントをやる意味は大きいかもしれない。というのも、bonjourのポジションは“メジャー内アンダーグラウンド”というか、コアっぽいものとマスっぽいものの二極化をミックスするポイントになろうとしていると思うんですよ」

瀧見「じゃあ、今回の『Bonjour Music School』も、そういうテーマ性へと持っていこうと」

鈴木「いままでの『Bonjour Music School』の主体性には僕は関知していないからわからないですけど、今回のハニカム版のイベントにおいては、そういう意図はありますね。いまクラブ・シーンの火か消えているわけではないけど、もう一度、音楽にうるさい人の足をクラブへ向かわせつつ、ポピュラリティのあるイベントにできればいいなって」

瀧見「うん、オールジャンル・イベントのなかで、ポピュラリティとヴァリュー感の中に、少し予測不能性を出している感じだよね」

──確かに、メジャーで活躍中のアーティストとクラブ・シーンど真ん中で活動しているDJが、貴重な共演を果たすパーティだと思います。

鈴木「よく“アンダーグラウンド=コア”って言われるけど、瀧見さんにしても決して1つのカテゴリーで終わらないDJスタイルを持っているじゃないですか。だから、今回のような多種多様な出演者のイベントでは、瀧見さんはどういうアプローチをするのかなって」

瀧見「まぁ、プロとしては、自分の持ち味をお客さんに合わせつつも出していくという感じですね。正直なところ、お金を出して音楽を買う人とクラブに行く人、DJをやる人というか、一般層と音楽をある程度能動的に買っている層が分裂している気がするので。例えば、CDやレコードを買っててもクラブ行かない人も多いし、逆にクラブには行くけど、CDを買わない人も多い。となると、」

鈴木「そこに変化は求めたいんですよね?」

瀧見「もちろん。パーティで何かしらのエデュケーションは必要だと思う。ただ、最近は本当の意味でのDJとエンターテイナーDJがクラブに混じり合って、DJ自体のカテゴリーというか存在が分断されてしまったよね。しかも、いまはエンターテイナーの方が力を持っているので、いわゆるマス感のあるものが受け入れられている。だから、音がアングラでも、存在はマス感があるような人が出てくればいのかもね」

──海外のDJはそういったバランス感覚に優れている人も多いような。

瀧見「特に、テクノDJはそうかもね。例えば、リッチー・ホウティンやリカルド・ヴィラロボスは制作物ではものすごくアングラな音を突き詰めているけど、存在感はメジャー。しかも、ビジネスに還元されているというか」

鈴木「その見解は、確かに正しいですよね。日本だと、真っ当なDJの存在感が、なんか小難しいものになってしまった気がしていて」

──こういった状況を生んでしまった原因というと。

瀧見「いろんな理由はあるけど、DJ側のこだわりと実際のお客さんとのギャップとか、後、音楽配信、特にFile化が存在物としての音楽を殺してしまったのは事実。iTuneに殺されつつ生かされているという。利便性と引き換えに、音楽の存在価値が減退したのは間違いない。盤を所有しなくていい、っていう人がもはやマジョリティだからね。その人たちがクラブやリスナーのメイン層になっているわけだから、当然、DJの価値も変わるよ。音楽を紹介するんじゃなく、ショーを見せればいいんだから。でも今回の『Bonjour Music School』はそのショーだけではなく、DJや音楽の価値も見せようとしているのかなって」

鈴木「そうですね。今回はハニカム流の音楽アプローチとして、1つのパッケージで見せたいんですよね。(藤原)ヒロシさんと猪野(秀史)くんのライヴもあるし、DJプレイもある。だから、メジャーとアングラの二極化だったり、一般層とコア層の断絶も、すべてなかったことにして──もちろん現実問題として、音楽のデータ化によるDJの価値の変質やリスナーの音楽に対する意識低下などはありうんだけど、そこは気にせず──音楽が充実した楽しいパーティを今作ったら、こうなるんじゃないかな、ってものなんですよね、『Bonjour Music School feat. honeyee.com』は。このパーティはある意味、シーンにおける“賑やかし”であるとしても、それへのニーズはあると思うんですよ」

瀧見「そういう考えがあるイベントだからこそ、SOUND MUSEUM VISIONでやることも正しいよね。以前はクラブ好きしか行かない場所というのがあったけど、VISIONはフロアがたくさんあって、いろんな人やDJがミックスするから。やっぱりパイを広げるのは重要だと思うな」

鈴木「とりあえず遊びたい、酔っ払って踊りたいって人もたくさん来ますからね。やっぱり、それがクラブに来る理由なんじゃないかなって。瀧見さんの考えに反論する形になるかもしれないけど、クラブやダンス・ミュージックを過度にストイックなものとして捉え過ぎていたのが、90年代〜2000年代だったのかな、って気もするんですよ」

瀧見「完全に、ジャンルとコミ二ティーで客層が分かれていた時期もあったからね。それはもちろんクラブというかサロン文化の本質のひとつでもあるんだけど、予定調和だけの自分が知っている世界とは違うものと出会ったり体験したりする、きっかけになるような場としてのクラブがある方がいいと思うけど。入り口は多くて広い方がいいからね」

鈴木「そうそう。そのジャンルを突き詰めるかっこよさも当然理解できるんだけど、いい加減さというか、風通しのよさがないと、ストイックな部分も輝いてこないのかな。エンターテインメントがあるから、クールでコアなDJも光るんですよね。例えば、VERBAL君がプレイした後、瀧見さんがプレイして、フロアの人が『あのロン毛のDJ、いいね』ってなればなって(笑)」

──なるほど、ハニカムおよび鈴木編集長の音楽へのアプローチは、じつにニュートラルですね。

鈴木「例えば、CDの新譜紹介の記事はいまや成り立たないんですよね。僕らが単純にリリース情報を配信しても、正直、読者の興味はない。音楽自体の価値が下がっているとは思わないけど、リリースってことの情報価値は下がってしまったんですよ。逆に言えば、過去音源が新譜のようにパッケージされていることもあるし、発売よりもずっと前にウェブで、先行で流れていたり。そういう意味でもニュートラルにならざるを得ないんですよね。なにか一つのシーンやトレンドにこだわってもリアリティがない。瀧見さんのBeing Boringsように個性的な音楽性があれば、それだけでインフォメーションとして成り立つけれど、すべてがそういう作品ばかりではないでしょ。となれば、僕が個人的に好きなテイストの音楽を紹介していくよりも、音楽を紹介するにあたって、コンテクストやその背景を伝えるようにしたいんですよね」

瀧見「音楽のトレンドに関しては、ハニカムはどう考えているの?」

鈴木「それこそEDMじゃないけど、もっとトレンドの音楽を紹介しないといけないのかな、って思いますよ。そういう意味だと、ニュートラルじゃないかも」

瀧見「でも、エレクトロっぽい音楽を取り上げることはあるでしょ」

鈴木「ボーイズ・ノイズのインタビューなどは掲載しましたけどね」

瀧見「ああいうアーティストは本当にメジャーだと思うよ。ヨーロッパだとテクノが本当にメジャー。DJは曲やジャンルというより、音のテクスチャーと鳴り、構造自体がわかってるかが重要。いい鳴りのキックが鳴っただけで、若いクラウドは盛り上がるからね。キックとハットの音質自体とバランスがキモで、後はDJのミックススキルが重要だけどね」

鈴木「でも、それがクラブであり、ダンス・ミュージックなんじゃないですか。ビートに特化しているというか。ただやっぱり、そういうものとは違う音楽があるからこそ、そうしたダンス・ミュージックも輝くわけで。だから、複数のトレンドが並行して存在しているんだと思う」

──瀧見さんは先日、海外のDJツアーに行ってましたが、シーンの動向はいかがでしたか。

瀧見「やはり、おおざっぱに言うとテクノの強さが相変わらず目立ったよね。ストレートなテクノではないんだけど、どこに行ってもテクノ的なテクスチャーのサウンドが盛り上がる。一般のお客さんが多い大箱だと、そこを意識してフロアをキープする事が重要。そこにマニアタイムをうまく入れつつ、っていう(笑)。ただ、アシッド・ハウスは古い音源でもミックス次第でオーケーっていうか、古さを感じさせないんですよね。フォームとして完成されてる強さを毎回実感する。そこにディスコ的なテイストを入れてくくのが自分的にはジャストかなと。実際そういうのを求められてる感じで呼ばれてる感じはしますね」

鈴木「日本って、不思議ですよね。行く場所によって、それこそクラブとライヴハウスで、メジャーとマイナーなものがまったく異なったりする。なかには、瀧見さんの音楽があるシーンの代表だと思っている人もいると思うんですよ」

瀧見「日本のシーンは結局、ドメスティックな音楽でマーケットが支配されているからじゃないかな。」

鈴木「でも、日本的って悪いことじゃないと思うんですよ。日本のDJはある種、クリエイター的な存在としてリスペクトされている。自分で曲を作って、それを自らがクラブでプレイすることも、その意味では正しい発想かなと」

瀧見「それはいいことなんだけどね。でも、アーティストやプロデーサーじゃないとDJができないという状況に陥ってしまった。アーティスト・アルバムをリリースして、それを宣伝するためにDJをやるのは、DJの本質ではないと思うんだよね」

鈴木「簡易ライヴみたいなものですよね、そうなると。でも、デジタルな技法で作れる音楽が増えてきちゃったから、ライヴというもの自体があまり意味を持たなくなってきたのかも。けど、それも含めて、悪くはないと思うんです。特殊だったり、日本的と言われるかもしれないけど、それでエンターテインメントとして成立しているならば、アリなのかなって」

──瀧見さんもDJであり、アーティストでもあるというスタイルですが、いまはどのようにDJ活動をコントロールされているのでしょうか。

瀧見「DJはあくまでも聴く側というかお客さんに合わせないといけない、っていう考えは根底にあるかな。でも、客に合わせないエンターテインメントも重要だけど、ショーになってはいけないと思うんだよね、DJは。でも最近は、DJにショーを要求されるというか」

鈴木「DJカルチャーにおいては、“エンターテインメント=ショー”ではないと。すごく、難しいところですよね、その差は。じゃあ、次の『Bonjour Music School feat. honeyee.com』はDJ本来のエンターテインメントとショー的なエンターテインメントがどう融合するか、面白い実験の場になるかもしれませんね」

──新しいクラブ・イベントの試みになると。

鈴木「そう、だって、なかなか見れない出演者の組み合わせだと思いますよ。ヒロシさんと猪野君のライヴ、メインストリームで活躍するアーティスト、そして瀧見さんが同じステージに立つというだけでも、なんかワクワクしますからね」

瀧見「ねっ、お客さんはどんな反応なんだろ。どんなDJプレイで行くか、自分も考えておくよ」

──期待しています! ちなみに、この2人がメディアでトークするという機会も貴重なので、お互いの活動に対する印象なんかを聞ければと。

鈴木「瀧見の素晴らしいところは、ずっと変わってないようで、いくつものシーンの変遷を乗り越えてきていること。立っている場所は変わっていないのかもしれないけど、でも動いていると思うんですよ。波の上に立っているわけだから、バランスを保つことも当然必要になる。それを意識的にやられているんですよね。瀧見さんを仙人のように捉えていたり、『音楽の求道者だと思っている』的な意見もよく聞くんですよ。でも僕は、常にコンテンポラリーで、常に時代の尖端に立っている人だと思っている。だからこそ、信頼できるんですよね。もちろんストイックに1つの道を歩んでいる人もリスペクトすべきだと思うけど」

──確かに瀧見さんは、太い芯がありながら、柔軟性も感じます。

鈴木「しかも今回、Being Boringsという名義でオリジナル・アルバムを出して、しかもリスニング向きのもので、名実共にアーティストになったわけで。だから、なんかホッとしたんですよね。これで瀧見さんがより説明しやすい存在になったというか。僕の好きなアーティストは瀧見憲司です、て堂々と言えるでしょ。まぁ、もっと早くリリースすればよかったのに、っていうケチも付けつつね(笑)」

瀧見「なんか恥ずかしいけど、ありがとうございます(笑)。じゃあ、自分から見た編集長はね、時代を俯瞰して感じ取れる人かな。筋を通して広げて伝える人というか。編集者ってそういう職業でしょ。きちんと文化的な理解を持って、ネットメディアという即時性のあるものを生み出している。今って、ファッションや音楽に限らず、そのものや人、ジャンル自体の原理主義者が多くて、文脈というか、バックグラウンドや関連性に興味を持たない。そういう人に対して、ハニカムはエデュケーションしてくれているよね。極端な話だけど、例えばMA-1というジャケットが、もともとは軍モノだったということすら知らなくて着ている人もいるわけで」

鈴木「さらに言うと、MA-1がフライトジャケットだということは、逆に軍モノがファッションになったということの意味を考えたいんですよ、僕は。音楽だって、ある日突然、生まれたものはなくて、そこにいたる必然があるわけで。そういう“興味の連鎖”みたいなものは、ハニカムを通して表現してきたいですね」

瀧見憲司
国内クラブ・シーンにおけるパイオニア的存在であり、自身のレーベル:Crue-Lと共に、海外の音楽界にも影響力を持ち続けているDJの1人。
リミキサーとしてもCorneliusやCut Copy、Hiroshi Fujiwara、Sebastian Tellierなど数多くの作品を手がけ、Crue-L Grand OrchestraやLuger E-Go名義での活動も高い評価を得ている。今年3月にはコンピレーション・アルバム「Crue-L Café」をリリース。また、神田朋樹との新プロジェクト:Being Boringsとして、先日、フルアルバム「Esprit」をリリースした。
http://www.crue-l.com


Being Borings
「Esprit」

Cru-L Records
¥2,520
now on sale

鈴木哲也
honeyee.com / .fatale 編集長
http://www.honeyee.com/

http://fatale.honeyee.com/

bonjour records presents Bonjour Music School vol.03 feat. honeyee.com

2012.12.14 FRI//SOUND MUSEUM VISION

SPECIAL LIVE:Hiroshi Fujiwara+INO hidefumi Band Special Live Set
SPECIAL SECRET GUEST:Mr.V
DJs:ILMARI(RIP SLYME / TERIYAKI BOYZ®), KENJI TAKIMI, SK8THING(C.E), DJ DARUMA(DEXPISTOLS), MASATOSHI UEMURA, UICHI YAMAMOTO, TETSUYA SUZUKI(honeyee.com / .fatale)
…and much more honeyee.com / .fatale DJs

【OPEN】22:00 
【CHARGE】DOOR:¥3,500  WITH FLYER:¥3,000
bonjour records限定前売チケット:¥2,500(bonjour records代官山店のみで12月1日より販売)
bonjour recordsレシート持参:¥2,500(bonjour records代官山店/新宿店いずれかのレシートを持参の方)

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